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東芝 ToSpeakに見る最新音声合成事情(後編)

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声優との住み分け

-現在、キャラクターが4種ラインアップしていますが、元の声は誰なんですか?

平林 プロのナレーターや声優さんを使っています。有名な方もいるのですが、その方の名前を出す・出さないという部分は悩んでいます。名前を出して「○○さんの声が合成音声になった」と広まっていくのを期待する一方で、名前を出してしまうと、声優さんの肉声と合成音の比較になってしまい、「似てないじゃん!」といった、少し捻じ曲がったフィードバックが来てしまうので…。微妙なんですよね(苦笑)。今後の可能性としては、「○○さんのStudio ToSpeak」みたいなコラボレーション企画の展開はあり得ると思います。

-声優さんが合成音声を敵視や危惧することはあるんですか?

平林 やはり、声優さんの中には音声合成のための音声収録がNGの方もいますし、例えば、「私自身がどこかのブースでアフレコをしている一方で、別の場所で合成音の私が仕事をしている。プラスアルファの仕事ができる!」と考える、音声合成に対してポジティブな声優さんもいます。CG技術と似ている部分もあると思いますよ。「CGで全部再現できるから、風景画像を撮影しにいきません」という風にはなりませんよね。ですので、実際の声と合成音声の住み分けはできると思っています。

電子書籍、スマートフォン・・・-音声合成技術とToSpeakのこれから

-今後どのような使い方が生まれてくると思いますか?

荒井 音声コンテンツの制作時に「ナレーターや声優をキャスティングして、スタジオで声を収録して使う」というこれまでのスタイルを、当社の音声合成技術を使うことでコストを抑えて実現可能になると思います。例えば、スクリーンセーバーを自由に作成・共有できる自社サイト「キ*カ*ザ*ル」で、ちょうど「サイトの使い方をわかりやすくしたほうがいいよね」という議論がされていたので、ヘルプ動画を作成しToSpeakの合成音声を当てはめて実践してみたところ、ヘルプ動画を公開してからユーザーが作るスクリーンセーバーのクオリティーが上がりました。また、電子書籍やスマートフォンのアプリや、音声認識サービスと組み合わせるとかは現実的な話じゃないかなと。そういう意味でも、音声合成って、今後すごいことになるんじゃないかと私もワクワクしています。広告キャンペーンにも活用できますしね。「Studio ToSpeak」は合成音声のみの提供ですが、ウェブの場合、動画とシンクロしないとなかなか面白みが伝わらない部分もあるので、フラッシュに読み出せるAPIを広告部で用意しました。このAPIは、他社の広告プロモーションにも活用いただけると思っています。我々が考えもつかないところで、もっと何か面白い、エンターテインメントに使える可能性もあるのではと思っています。

-現在、無料で一般ユーザーに公開していますが、ビジネスとして考えた場合、今後、どのようにして収益化していかれますか?

平林 まさに今、それを考えているところです。商業利用のライセンスをはじめ、「この声はタダです。この声は課金です」のような、プレミアム会員課金のようなフリーミアムの考え方は流れ的にはわかりやすいかもしれませんね。いろいろなパートナーともWin-Winな関係を築けたらと思っています。

荒井 今回は自社のキャラクター「ぱらちゃん」を使ってYouTubeに「ぱらちゃん神話」を開設しましたが、チャンネル登録をしてくれているユーザーの属性を見ると、アニメファンや鉄道好きの人などが使ってくれたりしています。そういう方たちにとってToSpeakは面白い遊び道具になっているんだと思います。たとえば、アニメキャラを使った面白いサービスを提供したいと考えている企業さんなどがあれば、Studio ToSpeakのAPIを提供することができます。色んな展開をすることができるので、是非、使ってもらいたいですね。

-Studio ToSpeak自体のバージョンアップや、今後の展開をお聞かせください。

平林 現在、10キャラクター中4キャラクターしか公開してないので、ユーザーの反応を見ながら残りのキャラクターを公開しようかなというのがまず1つ。ちなみに今、1番人気のキャラクターはヘンリーです(笑)。加えて、声の太さ・高さ・速さなどのパラメーター調整にも異なった軸を増やしたいと思っています。喋り方とか、語尾がのびるとか。究極は方言とか。あとは、将来的にユーザー自身の声で合成音を作成できるようにしたいですし、スマートフォン向けに音声認識と音声合成、言語翻訳、この3つを連携させた音声翻訳など、翻訳と絡んだコンテンツも考えうる範囲だと思います。このほか、もっと若年層にも使ってもらうために携帯サイトへの展開や、アニメとのタイアップなども実施していきたいです。本当に技術的にもマーケティング的にもやりたいことはたくさんありますよ(笑)。

-本日はありがとうございました。

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