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発売から2年、Xbox 360のこれまで、そしてこれから

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■爆発的ピークはなかったものの順調な販売推移を見せるXbox 360

-早速ですが、Xbox 360の発売から2008年初頭までの状況についてどのように分析していますか?

井上正之さん井上「数字で証明しにくいなというのが2007年末までの率直な感想です。というのは、2005年12月の発売直後の初動での大きなピークは作れませんでしたが、沈み込むこともなく着実に販売数を伸ばすことができています。初代Xboxではできなかった日本独自のコンテンツへの取り組みなど、豊富なソフトラインアップを取り揃えることもできているので、比較的順調に推移していると思います。ソフトの販売数も、普及台数に対して高い水準で推移しています。また、『THE IDOLM@STER』(発売:株式会社バンダイナムコゲームス)のような、オンラインにおけるコンテンツ販売が非常に好評であることなど、今までにないビジネスモデルが動き出しており、Xbox 360が今後一層期待を抱けるようなハードに成長してきている、というのがこれまでの流れでしょうか」

-では、初動で大きなピークを作れなかった原因は何だと思いますか?

井上「爆発的というほどまでには売れなかった原因のひとつとしては、他の次世代ハードに比べて1年早く投入したことで消費者の皆さんに次世代ゲーム機に対しての『敷居の高さ』を感じさせてしまったことでしょうか。早く出したのは我々なのですが…(笑)。『ハイビジョンって何?』ということの認知を高めるところから始まりましたから、やはり実際にやってみて大変なことは多くありました。それに加え、オンライン サービスをXbox 360 特有の要素として打ち出してもいましたので、『ハイビジョン』と『オンライン』という、ユーザーにとってはふたつの高い敷居があったのかもしれません。現在ではどちらもあって当たり前の機能かもしれませんが、当時はそれを1社で変えようとしていたという…。全体的なバランスをもう少し考慮するべきだったのかなと思います」

-今年は北京オリンピック開催で大画面テレビの需要が高まることも見込まれています。追い風みたいなものは感じていますか?

井上「北京オリンピックがどんなトレンドを作り出すかということを敏感に感じとって、それを、我々が自分たちのサービスと結びつけていくということが必要でしょうね。2006年のワールドカップ開催時は、ハイビジョンテレビはそれなりに伸びたもののXbox 360との相乗効果はほとんどありませんでした。単純に、時流に乗ったからといって売れるものでもないのでしょうね」

-Xbox 360ファンはソフトの所持本数が他の次世代ハードファンに比べてかなり多いという話を聞きますがこれはコアなファンが多いということを意味しているのでしょうか?

井上「コアなファンが多いというのもありますが、Xbox 360 には遊びたくなるゲームがたくさんあるということだと思います。特に昨年末は、弊社の『ロストオデッセイ』をはじめ、『エースコンバット6 ~解放への戦火~』(発売:株式会社バンダイナムコゲームス)や『アサシンクリード』(発売:ユービーアイソフト株式会社)など、ハードの成熟期に出てくる強力なタイトルが出てきたのもソフト所持本数を伸ばした一因かと思います」

-コアなゲーマーが多いと言われているXbox 360ですが、Xbox 360のターゲットはどの層を設定していますか?

井上「マーケティングの優先順位でいくと25歳~35歳の社会人をひとつの大きなターゲットと考えています。もちろんコアなゲームユーザーも重要なターゲットではありますが、深いゲーム体験をしたいユーザーは特定のソフトで見極めてハードを買う傾向にあると思うので、プラットフォームとしては、あくまでもすべてのユーザーに対して楽しみが伝わるハードであるべきだと思います」

-逆に、コアなファン層からの評価はいかがですか?

井上「高い評価をいただいていると感じています。当然、ユーザーからは『もっとこうしてほしい』などのリクエストはありますが、Xbox 360はオンラインサービスも含めて圧倒的にゲームそのものを楽しんでもらえているハードなのではないかと思います。今までオンラインとオフラインは別物のような感覚がユーザーにはあったと思いますが、弊社も含めて多数のメーカーさんがオンラインに取り組むようになったことで、ユーザーの中で『オンラインは、ゲームをさらに楽しめるシステム』という認識に変わってきています。そうなるとXbox 360のコンセプトが生きてきますよね」

-Xbox 360のソフトはジャンルがアクション系に偏っているように感じるのはなぜでしょう?

井上「ハード発売から2年目くらいまではアクション系のソフト比率が多いのは新しいマシンの傾向ですが、その中でもバラエティ豊かなラインアップになるようにゲームをリリースしていくというのは、我々も意識してバランスをとるよう心がけています」

-最近、シミュレーションゲームやアドベンチャーゲームは家庭用ゲーム機のリリースタイトル数が少なくなってきていますね。

井上「ゲームがより広いユーザーに受け入れられるエンターテインメントになるにつれ、考える部分をできるだけシンプルにしているゲームが増えてきているのかもしれません。じっくりと考えながら時間をかけて遊ぶゲームより、短時間でも楽しめる手軽なもののほうが受けているようですね」

-30歳後半になるとアクション系とか結構厳しいんですよね(苦笑)。御社的にはシミュレーションゲーム系ソフトの展開を考えてないということではないんですね。

井上「そうですね。そういうゲームというのは、やはりゲームを考えながらやるということに対して、すごくインタラクティブな要素をもっているので、まだまだ伸ばせると思います。弊社からも、アクションシューティングゲーム『Halo』を題材にしたリアルタイムシミュレーションゲーム『Halo Wars』を開発中ですし」

-「ダンスダンスレボリューション」など一般向けのソフトが、日本では発売されていないですが海外ではリリースされていますよね。これは、海外の方が、Xbox 360が一般ユーザーにまで広がっているからですか?

井上「確かにひとつの要因だと思いますね。我々としては、永遠のテーマになってしまいますが、ハード(の普及)が先か(豊富な)コンテンツが先か(笑)ということになります。もちろんどちらか一方だけではだめで、コンテンツとハード、両輪で相乗効果を生み出さないといけないですね。ハード側としては幅広いユーザーに遊んでいただけるようにより敷居を下げるようなことをしていく必要はあると思っています。」

■他の次世代ゲーム機との比較

-Xbox360は「PLAYSTATION 3」(以下、PS3)と比較されることが多いと思いますが、両者の相違点はどのようにお考えですか?「Wii」については?

井上正之さん井上「コメントする内容が難しいですね(笑)。我々は幅広いデジタルコンテンツの領域まで広げてゲームを含むエンターテイメントの提供を考えています。また、Xbox 360 のオンライン サービス、Xbox LIVE は特徴的で、非常に敷居が低くて、どこよりも使いやすいサービスだと思っています。もっとそういった強みを分かりやすく打ち出していきたいですね」

-現在、日本国内の家庭のリビングにはWiiが入っていますよね。今後、そこにXbox 360を置いてもらうにはどういうことをしていけばよいと思いますか?

井上「皆で一緒に楽しめるゲームをもっと増やしていくことでしょうか。実は、Xbox 360は友だちと楽しめるタイトルもたくさん出ているんです。ただキャラクターデザインの親しみやすさなどの点で、差はあるかと思います。そこで我々は、リアルな接触として楽しめる点と皆で遊べるサービスを武器に、家庭のリビングに入るということを試みていかなければと思います。要はテレビの横にある理由があるということでしょうね」

-それは、Windowsのメディアセンターのようなイメージで、家庭のリビングにあるのがパソコンではなくて、Xbox 360でもいいんじゃないかということですか?

井上「今後、パソコンがホームサーバーのような役割になり、どこか1カ所でコンテンツを共有するみたいなことになっていった場合に、Xbox 360の端末としての機能が生きてきますね。そうすると、Xbox 360をリビングや部屋のテレビに接続して、Xbox 360が提供しているいろいろなサービスを楽しめる上に、家庭内のパソコンに入っているデータもネットワークを介して楽しめるという、ゲームハードとしてもPC端末としても成立しているという2つの側面性が生きてくるのではないかと思います。ただ今はまだ、PCと連動して楽しんでいるユーザー数はあまり多くはないと思いますので、さらに訴求していきたいと思います」

-Xbox 360は、フレンド登録など含めてSNS的だと思うんですが、SNSを前面に打ち出した売り方やアプローチは、今後、お考えですか?

井上「現在Xbox 360のオンラインを楽しんでいただいているユーザーは、コミュニティーツールとしてオンラインで楽しんでいるプレーヤーと、対戦などを中心にゲームの一部として楽しんでいるユーザーの大きく分けて2種類の方がいます。我々の最終的な到達点としては、フレンド機能をはじめとする、人々がつながりそして経験をも共有できるSNS的なものが浸透することなんです。そういった意味でXbox 360のフレンド登録は到達点への段階の1つで、みなさんにぜひ経験していただきたいと思っています。その反面、そういったことを特に求めずに、ゲームを窓口に入ってきたユーザーにとっては、SNSが前面に出されていると敷居が高くなってしまう場合もありますので、ユーザーに選んでいただける両方の楽しみ方を提供していくことが必要になると思います」

-SCEの「HOME」のようなメタバースへの展開は考えていますか?

井上「現状考えておりません。それぞれのゲームや、Xbox LIVE のあらゆるサービスが非常に優れたものだと思っています。しかし、かたちは全然ちがうんですが、マイクロソフトが無償で提供しているゲーム開発環境『XNA Game Studio』は、『一般の方々への家庭用ゲーム機の開発環境の提供と、制作したゲームの配布』を実現するものですので、、ある意味メタバース的な発想だと思います。門戸が開かれて、ユーザーを結び付けつつゲームの産業自体にもいい影響を与えたいですね」

■「Xbox 360アーケード」の発売開始とこれから

Xbox360-これからの日本における展開をお聞きしたいのですが、Xbox 360自体はどういった方向を目指す予定ですか?

井上「コンテンツもハードも進化を遂げていて、現在はそれぞれ発売当初とは異なったものになりつつあります。競合他社も含めて前世代のマシンでは夢物語として話をしていた、例えば映画配信なども、この世代のマシンはそれをいかに実現するかということが重要なポイントになるのかなと。そういった意味で2008年以降は、ゲーム+サービスを豊かにしていくとともに、我々が夢物語ではないサービスをどれだけ現実のものとしてユーザーに提供できるのかがテーマです」

-3月6日に発売が始まった「Xbox 360アーケード」についてお聞かせください。

井上「Xbox 360アーケードはXbox 360を手ごろな価格で楽しみたいというユーザー向けのエントリーモデル的位置付けです。『低価格でXbox360を始めたい』というリクエストも多く、そういった声にこたえるためにも、最先端のゲーム機をより幅広い人に遊んでもらうための商品として発売いたしました」

-ジャパンオリジナルXbox 360などの発売予定はありますか?

井上「現在予定はありませんが、いろいろな可能性はあると思います。1つのモデルに絞ることがユーザーにとってベストなのであれば、1モデルにするのもアリだと思います。例えば皆さん、『iPod』を選ぶのは慣れていると思うんですよ。Xbox 360のモデル選びもそれに近いものなんですが、ゲームでいくつかあるモデルの中から選ばなければならないというのは初めての経験で、悩まれる方が多いのかもしれませんね。日本オリジナル仕様については、Xbox 360が現在の価格で提供できているのは全世界での生産規模が背景にありますので、その点に影響がでてきてしまう可能性があります。そうなった時、ユーザーにとってよいことかどうか…(笑)。今後も日本のユーザーにとって一番ベストな提案は何か考え続けたいですね。」

-昨年から始まったコンテンツの「インサイドXbox」は、現時点では顧客満足という切り口で配信されているかと思いますが、今後、新規ユーザー獲得のプロモーションツールなどとして拡張する予定はありますか?

井上「実はインサイドXboxについてはどういったコンテンツ提供の仕方がユーザーにベネフィットをもたらすことができるのかすごく試行錯誤しています。ほぼ毎日配信していますので、ユーザーが毎日Xbox LIVE につなげたくなるようなコンテンツとしての意味も持っています。そのため、イベントレポートやXbox 360ユーザー向け情報がメインですが、今後もさらにユーザーに楽しさを提案する場として、役割を増やしていきたいですね」

-インサイドXboxの映像コンテンツの2次利用は考えていないんですか?

井上「今のところ考えていません。ぜひ毎日チェックしてみていただければと思っています」

-最近のXbox 360の満足度を影で支えているとも聞く「プラチナコレクション」について聞かせてください。あのシリーズはラインアップも豊富で、ユーザーも手を出しやすいため、御社にとって強みになるシリーズだと思いますが、今後もタイトルラインアップを拡充してく予定ですか?

井上「その予定です。ユーザーの満足度が上がっている要因の1つとして重要なシリーズだと思っています。実は、それだけでなく販売店様にも好評をいただいているんです。Xbox 360のラインアップを店頭で分かりやすく訴求する商品として、また発売済みタイトル資産を生かすという点でも、プラチナコレクションは適しています。プラチナコレクションが出てきたことで、ショップにおけるソフトの動きが活発になるなどの効果が生まれています」

■情報感度が高い人間が集まる情報発信地-秋葉原

井上正之さん-最後に、Xboxチームにおける秋葉原のイメージや位置付けをお聞かせください。

井上「世間的にサブカルチャー要素がフィーチャーされがちですが、実際の姿はそれよりも情報発信地としてのカラーが強く出てきているような気がします。街に来ている人たちもネットで情報収集して、現物を見て、比較検討した結果、製品を購入するような情報感度がものすごく高い層ですしね。秋葉原でいくつかイベントを開催している我々としても秋葉原でイベントを行う際の情報発信の仕方と、渋谷でやる際の情報発信の仕方は変えています。秋葉原は街に来た人たちがそこで見たものを家に帰ってブログなどに書いてくれるようなバイラル効果が見込める発信地としてとらえているため、今後、我々が機能についてコンテンツを通して紹介していく際は特に重要な場所だと位置づけています」

-ありがとうございました。

【あとがき】

現実を踏まえ、「いかにしてユーザーに楽しんでもらうか」を1番に考えるXboxチーム。楽しさをさらなる層にまで訴求すべく国内におけるこれからの広告展開や新しいコンテンツ提供など、2008年は少なからずいろいろな発表をしてくるであろう。アキバ経済新聞では今後も、Xbox 360とマイクロソフトXboxチームに注目していきたい。

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