プレスリリース

高度人材の知を継承・進化させるAI「コーザルAIアシスタント」発表

リリース発行企業:株式会社ヴェルト

情報提供:

株式会社ヴェルト(本社:東京都、代表取締役 CEO 野々上 仁、以下ヴェルト)は、自社が提供するコーザルAIプラットフォーム「xCausal(TM)(クロス・コーザル)」において、企業や組織が高度な専門家や熟練者の知識を因果関係としてモデル化し、組織内でデジタル活用できるようにする「コーザルAI(因果AI)アシスタント機能」と、その実装を支援するプロフェッショナルサービスを新たに発表します。「コーザルAIアシスタント機能」は2026年1月より順次提供を開始し、導入支援やカスタム実装等のプロフェッショナルサービスは即日利用可能です。


コーザルAIアシスタント : 汎用知識と組織内専門知識で知的業務の生産性を飛躍的に向上

これまで、組織に蓄積された高度な専門知や熟練者のノウハウをAIを駆使して継承しようとしても、一般的な生成AIやRAG(Retrieval-Augmented Generation)だけでは不十分でした。生成AIは知識を大量に扱える一方で、パターンと確率のみに基づいて回答するため、時に誤った出力をする弱点を持っています。これに対して人間の専門家は「なぜそういう結果になるのか」という因果関係を踏まえて意思決定をするため、再現性と説明可能性のある結論を導くことが可能です。この因果的な知見をモデル化するアプローチは、暗黙知を含む専門知識を整理し、組織全体で活用可能な形に変換する有効な手段となります。一方で、従来、因果推論を行うためのモデルの構築には高度な専門知識と長い時間を要してきました。今回のアップデートにより、組織内外に散在する専門知識を、よりスムーズに因果関係ベースのモデルとしてデジタルに活用できるようになり、これまでにないスピードと精度で組織知識の継承と活用を支援します。

■ 背景:日本の主な経営課題 - 暗黙知の流出、伝承先不足、組織知識の空洞化

総務省の調べによれば、2050年には日本の生産年齢人口(15~64歳)が5,275万人へと減少し、2021年比で約3割減少すると見込まれています。労働力不足や経済規模の縮小に加え、伝承先となる人材の不足から、技能やノウハウの継承が滞るリスクが高まっています。また別の調査によれば、製造業の半数以上が技能継承に課題を抱え、熟練者や専門人材の退職に伴う暗黙知の流出が、現場力や研究開発力を脅かす深刻な問題となっています。
(出典:総務省「情報通信白書」2022年版、労働政策研究・研修機構「ものづくり産業における技能継承の現状と課題」)

■ 生成AIの弱点とコーザルAI(因果推論AI/因果AI)の必要性

近年、AIの進展により、組織に蓄積された知識をデジタル化して活用する動きが急速に広がっています。特に生成AI(大規模言語モデル:LLM)は、情報探索や文章生成の効率化を通じて、企業の知識活用に大きな期待を集めています。しかし、生成AIには構造的な弱点が存在します。MITやハーバード大学などの研究チームは、LLMが表面的には理解しているように見えるものの、実際には実践で誤る「わかったふり」現象を「ポチョムキン理解」と名付け、その危うさを指摘しました。これはAI評価基準の再考を促す契機となっています。
(参照元:https://arxiv.org/abs/2506.21521

この問題の背景には、生成AIが確率論に基づく出力に依存していることがあります。そのため、同じ質問でも毎回異なる応答を返したり、再現性の求められる処理(数式計算など)を苦手とする特性が存在します。人間に近い汎用人工知能(AGI)を目指す上でも、この弱点は解決すべき重要な課題とされています。一方、特に高度な専門技術を持つ人は、原因と結果の関係を構造的に理解しており、「何が起きそうか」ではなく「なぜ起きるのか」を捉えることで、条件の変化にも対応できる再現性と説明可能性のある結論を導いています。こうした因果的な知見をモデル化し、誰もが活用できる形にすることで、組織知識の継承と活用が進み、経営や現場の判断を一段と高度化することが可能になります。

コーザルAI(因果AI)は生成AIと基盤AIの弱点を補完し利点を最大化

■ 解決策:因果モデルが “デジタルな熟練者・専門家” になる

当社のコーザルAI(因果AI)「xCausal(TM)(クロス・コーザル)」およびプロフェッショナルサービスでは、熟練者や高度人材が持つ「状況や前提条件(交絡因子や共変量)」「どのような行動や施策をとるか(処置)」「その結果として得られる成果や影響(アウトカム)」を因果関係のモデルに整理します。また、論文や辞典などの信頼性の高いデータソースから、自然言語処理を活用した因果知識抽出技術によって学術的に証明された因果関係の反映も可能です。さらにデータから未知の関係を発見し、専門家の意思決定プロセスをモデル化、属人的な知識をデジタル上に再現することができます。

これにより、現場のベテランや専門家に「なぜその結果になるのか」「こういう状況ではどうすべきか」を尋ねるのと同等の答えを、再現性と説明性を備えた形で提示できる、いわば“デジタル高度人材”を組織内に常駐させることが可能になります。またデータを継続的にアップデートすることで、更なる知識の高度化が可能になります。

高度人材は原因と結果を推論して行動

■ コーザルAIアシスタント ― 3つの主要機能とプロフェッショナルサービス

コーザルAIアシスタントは、複数のAIエージェントが連携して、因果モデルの発見・改善・活用を自律的に実行します。専門知識から既知の因果関係を抽出し、頑健性評価や必要な変数の探索を通じて未知の関係を発見。信頼度の高いモデルを管理者に提示し、人間の判断をフィードバックとして学習します。こうした「Human in the Loop (人間参加型)」設計により、因果モデルの品質を継続的に進化させることが可能です。また事前準備として、専門家から得た因果関係の知見を分析・整理し、必要な変数の取得やルール設計をもとに、高度人材の思考プロセスをモデル化するための様々なプロフェッショナルサービスを提供しています。

1. 因果知識抽出エージェント群
文献・業務資料などテキストデータから既知の因果関係を自動的に抽出し、事前知識としてルール適用することが可能です。専門家から得た因果関係の知見に加え、体系的にわかっている知識を取り込むことが可能です。モデルへの適用は、専門家の判断を得た上で実施します。

2. 自律型因果モデリングエージェント群
本エージェント群は、オーケストレーター・エージェントを中心に、複数の因果推論エージェントを連携・制御しながら自律的に動作します。既知の因果モデルに加え、頑健性評価の結果をもとに、可能性の高い未知の因果関係や交絡因子を発見・補完して提示します。さらに、ユーザーの用途に応じてCATE(条件付き平均処置効果)やRCA(根本原因解析)などの結果を提示しつつ、管理者との対話を通じてモデルの仮説検証や改良を自律的に繰り返します。従来、人手によって試行錯誤しながら行っていた因果関係の発見や検証、モデル更新といったプロセスをエージェントが担うことで、これまでにないスピードと精度で因果モデルの構築と進化を実現します。

3. コーザルRAG(Retrieval-Augmented Generation)
承認済みの因果モデル=「コーザルアセット」(当社での呼称)を活用し、対話型UIを通じて根拠ある回答や反実仮想のシナリオを提示します。これにより、一般ユーザーは専門家に直接質問するのと同様に、因果的な洞察を即座に得ることが可能になります。さらに、今後提供予定のAPI等を通じて接続された外部データやリアルタイムデータを継続的に監視し、因果モデル上での変化を自動的に検知します。その結果、リスクの兆候を早期に把握し、対策や改善機会を自律的に推奨します。

コーザルAIアシスタントの構成

■ 導入効果
● 属人化の解消とノウハウの組織活用
ベテランや専門人材の判断プロセスを因果モデルとして機能化し、退職や異動に左右されないノウハウの継承と、データに基づく発展を実現します。通常、忙しくて聞けない高度人材のノウハウを多くの人が活用できるだけでなく、組織の知識として発展させ、開発や問題対応など複雑な業務での再現性を確保することが可能になります。

● 意思決定における説明可能性の確保
「なぜその結論に至ったのか」を因果関係を示すモデル(コーザルアセットと呼ぶ)によって可視化し、結論の背景となる前提条件や因果経路を明らかにします。これにより、経営層や現場担当者は意思決定の根拠を第三者に説明できるようになり、社内外に対する透明性や納得感を高めることが可能になります。また施策の打ち手と効果を具体的な数値で定量化して示すことが出来、問題の解決や、投資の優先順位付けなどを高速化します。

● 生成AIとの組み合わせで知的業務を高度化
コーザルAIアシスタントでは、自組織内の経験則と信頼度の高い知識を保有するため、生成AIが得意とする汎用知識を活用した調査やアイデア出しを利用しながら、自組織での具体的な対策をシミュレーションすることが可能です。これにより事業企画や問題対応などの知的業務において、具体的な根拠を持った推察が可能となり、知的業務の高度化・効率化と企業全体でのAI活用価値を拡張します。

● ITサービスのインテリジェント・エンジンとしての利用
コーザルAIアシスタントをリアルタイムなデータ更新と合わせることで、原因と結果の関係に基づいたリスク検知や個別最適化された推奨などを行うことが可能です。ヘルスケアサービスや、製造・金融・物流をはじめ様々なITサービス連携により今までにない付加価値を提供できます。

高度人材の知識をデジタル知に : 暗黙知や専門知識を因果関係のモデル化でコーザルAIアシスタントとして継承・発展させる

■ 東京大学 大学院総合文化研究科 今泉 允聡 准教授によるコメント
AIによる知識集約と意思決定支援が進む中で、現代的AIの出力の信頼性の担保は未だ大きな課題とされています。今回発表された因果推論技術は、構造化された因果的知識のモデルを内部に構築し運用・更新することで、AI出力の信頼性と解釈性の向上を実現しています。このようなアプローチは現代的AIの欠点を適切に補完するものであり、今後の因果推論領域におけるAI活用のモデルケースのひとつになると考えられます。

■ コーザルAIのリーディングカンパニーヴェルトが展開する「xCausal(TM)」とは
サービスサイト: https://xcausal.com/
xCausal(TM)(クロス・コーザル)は、データサイエンティストでなくてもコーディングなしで使える、ビジネスユーザーを利用対象としたSaaS型のコーザルAI(因果推論AI)プラットフォームです。自社開発Smallytics(TM)(因果性変数推奨技術)やCKE-LLM(因果知識抽出LLM)といったインテリジェンス技術を内蔵し、複数から選択可能な因果探索技術と構造的因果モデル(SCM)に基づいた因果推論を組み合わせることで、仮想的な因果効果の検証を分単位で実現。研究開発サイクルの短縮や実験成功率の向上、高度人材の生産的活用を可能にします。またAI技術や信頼性評価技術による継続的改善によって、因果モデルを組織内の知のデジタルアセットとしてシステム活用を可能にします。ヴェルトではこれらを一貫してサポートするプロフェッショナルサービス を提供しています。

■ 株式会社ヴェルトについて
株式会社ヴェルトは、社会課題解決とグッドウィル・イノベーションを加速するためにデータ解析技術を開発する、データサイエンス・カンパニーです。現在主流のAI技術の多くは、算出結果の根拠を説明するのが難しいブラックボックステクノロジーです。一方、人による意思決定や課題解決、研究開発などの分野では、アウトプットに至るメカニズムを解釈し説明できるホワイトボックスのアプローチが重要です。私たちは、因果関係ベースのホワイトボックステクノロジーと相関関係ベースのブラックボックステクノロジー双方の利点を活かし、イノベーターの皆様に「信頼できるAI」を提供いたします。ヴェルトは単なる技術革新ではなく、技術との付き合い方を革新することで、人類社会と地球環境にポジティブスパイラルを創造します。

代表者 代表取締役 CEO 野々上 仁
本社  東京都渋谷区神宮前5-18-10 2-D
設立  2012年8月1日
URL  https://veldt.jp

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