特集/コラム

【インタビュー】2007-12-25

アキバ王に聞く―オタクカルチャーと秋葉原の関係(後編)


■ オタクとファッションとアキバルール

−ところで、最近は、オタクも普通の格好のオタクが増えましたよね。

寺尾「あれアキバにマスコミが来るからですよね。オタクの格好してると撮られちゃうんで。でも靴がスポルディングかニューバランスだったらオタクだって分かっちゃう(苦笑)」

−そうですよね。僕もニューバランスです(笑)。おしゃれしたかったらナイキとかアディダスとかプーマとか履くじゃないですか。

寺尾「でも、ニューバランスは安いし機能性抜群ですよね(笑)」

−壊れないんですよ。

「ナイキはデザインが多いしオシャレ過ぎるから選べない。そうなると、ニューバランスが無難ですごく落ち着くんですよ」

−確かに。原宿にあるニューバランスの店、アキバに移転してくればいいのに(笑)。

寺尾「でも実際あるとあまりいかなかったり(笑)。以前、秋葉原デパートの中にユニクロがありましたよね」

−靴もそうですが、鞄もみんなあんまり変わりばえしないですよね。

Photo1寺尾「そうですよね。ヨドバシAkibaの中にリュックサックを全面に押し出した売り場あるじゃないですか。あれ馬鹿にしてんのかなと思って(笑)。思いません?これだけ最新のもの売ってるのに、なんでここだけリュックサックやたらと売ってんの!?みたいな(笑)」

−挑発されてる感じですね(笑)。

寺尾「ヨドバシのあの一角だけほんとにオタクを挑発してますよ。最近はノートPCが軽くなったんで肩掛けでもいけるんだぞと」

−ステレオタイプのオタクファッションしてる人、減りましたよね本当。

寺尾「減りましたね。シャツイン、バンダナ、グローブなんかほんと昔の話」

−あの辺と痛車ってつながってないんですか。よく考えたら、痛車ってどうですか?都内近郊の人じゃないですよね。地方の人なんですか?

寺尾「そうですね。地方の人のほうが多いです。秋葉原ってそもそも犯罪がおきにくいじゃないですか。秋葉原に来ると満足するからそれで欲求とかストレスが解消されるんです。むしろ地方のオタクのほうが発散できるものがないからストレス溜まるんですよ。で、地方にいるオタクは車を持ってて発散の余地がないんで自分でそういうことやりだすと。年末とかコミケになると地方から集まってきますよね。それで痛車がアキバに並ぶと」

−秋葉原で犯罪が少ない理由もそこにあるんだ。

寺尾「犯罪ものすごい少なくないですか?もう全員(欲求が)解消されて帰っていくんですよ。多分」

−それに、オタクはあんまり人のことに興味ないですしね。

寺尾「もめ事起こらないです。お互い僕にかまわないでって、ひたすら歩いてるわけですから。たとえ、ぶつかってもお互い関わらないようにしとこうっていう暗黙の了解があります。ただ、知らないうちに右側通行左側通行が決まってますから、そんなにぶつからないんですけど(笑)。そんな中、観光客が3人広がって歩いてるのなんか見ると、ムっとしますよ(苦笑)。だけどアキバ系は弱いんで、それが言えず、指さされてもいっこうに何も言えず、どんどん渋谷系に侵略されちゃうんですよね」

−指差してる女の子とか確かにいますよね。

寺尾「ま、指さしてはいるんですけど、逆にオタクの心の中では『あ、あいつ観光客だ』って指さされてるんですけどね」

−確かに(笑)

寺尾「あとは、たまにカップルとか後ろついていくと間違ったことを得意げにしゃべったりしてる男がいて、もうほんとに腹立ちますよね。一切、手は出せないですけど、オタクだから(笑)。逆に『お前彼女いるの?』って言われた瞬間にすべて終わりますし(泣)」

■ オタクにおける恋愛論

−カップルの話が出ましたけど、追っかけてる2次元のものと、3次元の女性の趣味っていうのは相反するんですか?それとも共通なんですか?

寺尾「割と共通だと思いますよ。だけど、オタクって2次元美少女求めてるから3次元に対して理想が高いんですよ。高いんですけど、実際に出会ってみたらどんな子でも割と優しく付き合えるみたいな」

−言いますよね。「オタクは優しい人が多い」って。秋葉原自体が優しい街ですしね。

Photo1寺尾「話はずれますが、会社やってて最近思うんですけど、よく家庭と仕事はバランスだって言うじゃないですか。仕事だけ突っ走ると家庭崩壊して、家庭だけ大事にすると仕事ができなくなるっていう。オタクの場合、家庭のかわりに趣味が入ってくるんですよ。家庭を置いといて、オタクってのは仕事と趣味で成り立ってるんです。仕事が忙しくなると、趣味に手がまわらなくなって、趣味ばかりやってると仕事に手がまわらなくなっちゃうような。僕がそうなんですよ(笑)。だからもう、家庭には手を出せない状況にあるんじゃないかと思いますね。本来、一般の人が家庭と仕事でバランスとるべきところを、家庭が全部趣味になってしまった人がオタクなんではないかと」

−オタクと付き合うためには、自分の趣味に女の子を引き込めなかったら、絶対に無理ですよね。まあ男はですけど。その反面、例えば「腐女子」と言われている女の子たちとはうまくいかないんですか?お互い理解できそうですけど。

寺尾「オタクと腐女子が付き合えるかと言ったら、付き合えないんですよ。オタクと一般人か、オタクとオタク女子、一般人と腐女子は相性いいみたいですが」

−そこで一般人をどれだけ洗脳できるかなんですよね。

寺尾「そこが勝負だと思いますね。男ってそういう願望あるじゃないですか。自分がオートバイ好きだったら、オートバイで後ろに乗ってくれる子がいいと思うじゃないですか」

−ありますね。

寺尾「逆のパターンもありますよね。自分をオタクだと思っていたんだけど、付き合った女の子がもっとオタクでそっち寄ってっちゃう。絶対どっちか寄ってかなくちゃ成り立たないですよね。でも、似てる趣味で付き合っちゃうとちょっとのずれが気になっちゃうんです。ちょっとしたずれが何なんだよと。イライラしちゃうんですよ。お互いプライドあるんでぶつかっちゃうんですね。ひとりが妥協するとうまくいくと思いますね」

−オタクは彼女を作れないみたいな話ありましたけど、最近そんなこともないんじゃないかなと思うんですけど。

寺尾「萌えブームのおかげで、逆に女性がオタクに近づきやすくなったとは思うんです。『私の彼氏オタクなの』って言ってもまあまあ理解される」

−ほっといても浮気しないし安心ですしね(笑)

寺尾「そうですね、ほんと。余計な心配しなくていいですね。『フィギュアとかに目がいって腹立たないんですか。』っていう、カップルのオタクへのインタビューとかあるんですけど逆に浮気するんだったらフィギュアのほうがぜんぜん安全ですし」

−でも、結局のところ誰しもオタクだとは思いますけどね。何かしらの。趣味って意味では。

寺尾「オタクって言われるのは、その趣味が一般的に見て理解・共感できるかできないかで決まるんじゃないでしょうか」

■ 観光客と行政の進出、そして、これからのアキバ

−ところで、最近、秋葉原の街に海外からの人、増えましたよね。アキバのどこに良く行ってると思いますか?

寺尾「そうですね。ツアーで来る方は意外とコアなところに行くんですけど、普通に来てる方はやっぱり家電店とか免税店に行きますね。駅前の免税店なんかは日本人形を取り扱ってるんですけど、それがバカ売れしてるとかいう話も聞いたりします。あとは、以前、日本銀行の人から聞いた話なんですけど、フランス人なんかを接待してると『アキバはどこなんだ』『アキバに連れて行いってくれ』とよく言われるらしいですよ。それだけメジャーになってきたんでしょうね」

−そんな話、よく聞きますね。外国の人にとってのアキバは、六本木とか京都と同列くらいになってきてると。一方で、日本人の観光客も多くなりましたよね。

寺尾「観光客多いですね。今年の夏のコミケなんか一般人がものすごく多かったんですよ。もう明らかに軽装できていて…軽装で来るって言うのもおかしいですけど(笑)」

−目的がちがう?

寺尾「『1度見に行ってみたい』っていう目的だけで。いやあ、あれは軽い気持ちで見に行くイベントじゃない。相当もまれたと思いますよ(笑)」

−秋葉原自体もそういった人が増えましたよね。今、麻生さんも含めてオタク文化を世界へという動きが国をあげて行われてますよね。これについてはどう思われますか?

寺尾「麻生さんにはだいぶ期待してるんですけど。そもそも日本のアキバが世界一だとしたら、今、勢力を拡大していっているのは深夜アニメ。だから深夜アニメがゆくゆくは海外に受け入れられるはずです。秋葉原に憧れている外人が秋葉原に憧れ続けてるうちは、秋葉原のトレンドを追い続けるわけですから。例えば秋葉原のトレンドが深夜アニメ萌え美少女系に行くなら回りもそれに行くはずなんです。ただそこに引っかかるのは海外との法律の違い。日本は性表現関係がわりとオープンらしいので」

−寺尾さんがアキバ王になられた頃から電気街を含め、秋葉原の街ががらっと変わりましたよね。それについてはいかがですか?

寺尾「そうですね。ソフマップが再編され、秋葉原デパートが閉店し、どんどん普通の街になっていっちゃうのが怖いですね。よくオタクの間でも話してます」

−でもあの混沌とした街の感じは、いくら再編されても根底は変わらないですよね?

寺尾「見た目は変わっても、中身は変わらないんじゃないかなと思います。」

−「メードの次は何か?」とか、「萌えの次は何か?」とか、そういうのは一概には言えるもんなんですか?

寺尾「あるときぽっとでてくるものだと思います。メード喫茶ブームだって突然出てきた感じじゃないですか。メード喫茶で、ブームの前に出店してしまったがために潰れてしまったところとか結構ありますもんね。今だったら絶対儲かってたんですけど」

−ところで、最近、国とか、公共団体が秋葉原に進出したり、秋葉原を応援したりっていう動きがあるじゃないですか。そういうのはどう思いますか?

寺尾「充分理解したうえでやってくれるのはいいんですけど、そうでない場合が結構あるんですよ。あまり知らなくて何かしようとするところに限って力が強かったりしますし。前にそれを考えていて、こういう勝手な行政とかの動きを誰か止めないと秋葉原がなくなるかもしれないと。だから僕はそれを止められる人間になろうと思ったことはあるんですけど」

−逆に言うとみんなが麻生さんのことあれだけ応援したりしてるのは、「あの人結構わかってるな」っていうことなんですか?

寺尾「オタクの中ではものすごいよくわかってるなっていうことだと思います。若干悪乗りしている感じもありますが(苦笑)」

−最後に寺尾さんにとって秋葉原ってどんな街ですか?

Photo1寺尾「『大人の秘密基地』だと思います。アキバって家族とか気にしないで自分だけの趣味を楽しめる上に、店を発掘する楽しみがあるっていう意味で『大人の秘密基地』ですね。あとは、アダルトって意味も含めて。それに、店がすぐつぶれてまたすぐ新しい店が建つと、その変化がおもしろい街だなと思います」

−なるほど。「大人の秘密基地」いいですねえ。今日はありがとうございました

寺尾「だいぶしゃべらせていただきました(笑)」

【あとがき】
「『オタク』は僕にとっての褒め言葉」と、屈託のない笑顔で語る寺尾さん。「アキバ王」になるべく秋葉原の街と文化を舞台にした彼の戦いはこれからも続いてくだろう。そんな寺尾さんの活躍に今後も注目していきたい。

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