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アキバ土産の大藤が語る-企画系土産商品の裏話

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■創業当初から企画系土産商品に注力

大久保さん-初めに御社の変遷をお聞かせください。

大久保「昭和29年に土産品問屋として、創業約54年の会社になります。現在の会長が浅草で創業した後、台東区根岸を経て昭和40年に荒川区西日暮里に移転。その後2000年を期に現住所の新社屋を竣工し現在に至ります」

-創業当時はどのような状況でしたか?

大久保「はじめは東京みやげの問屋として『雷おこし』『瓦せんべい』『羊羹』など地場産系の土産品を浅草、上野、東京タワーなどの小売店に卸していましたが、その後会長は企画に重点をおいた観光土産品卸に挑戦し、全国に向けて発信していきました。以降、全国のメーカー様と繋がりをもつようになってからは、各メーカー様や問屋様から商品企画の依頼を受けリリースするようになり、そして『へそまがり饅頭』という大ヒット商品が生まれました」

-なるほど。

大久保「最近は問屋の力が弱まってきていますが、かつては問屋という事業が重要視されていました。その中で企画を重要視した企画問屋というかたちで展開してきていますので、昔で言えば珍しかったかもしれませんね」

-逆風みたいなものはなかったんですか?

大久保「昔の商人は人情を大切にるす人たちが多かったため、弊社の会長も商人といいお付き合いをして、多くのメーカーから『大藤さんの商品ならば』という信頼を寄せてい頂ける関係を築いていたため大きな逆風はなかったと聞いています」

大藤さんの商品-そんな御社の企画商品といえば国会議員をパッケージにプリントしたお土産商品が有名ですが、こちら肖像権などのトラブルは起きないのでしょうか?

大久保「当然議員さんにも肖像権がございます、絶対にご迷惑をお掛けしない様に商品を ご本人にお送りして『この様な商品を販売させていただきます』と、事前にご挨拶はさせて頂いています。もちろん、ご本人が『やめてほしい』との要望があれば、発売は即座に中止します」

-みなさん、どんな反応をされますか?

大久保「『面白いね』と言って下さる方もいらっしゃる一方で、ノーコメントの方もいらっしゃいます(苦笑)。元々、議員という立場上『良い』『悪い』の評価を言えないというのもありますが。『良い』と言えば公認扱いになってしまいますし、『悪い』と言えば非公認扱いになり、マスコミに『●はOKで●はダメなのか』というツッコミを入れられてしまうので、政治家の方もそこはイエス・ノーはっきり言わないということもありお互い暗黙の了解で販売させていただいています。当然商品を作る上では人物を誹謗中傷したり不快感を絶対に与えないことと、あくまでも応援するということを大前提として、皆さんに喜んで、楽しんで笑ってもらえるシャレの効いた付加価値商品ということを最重要課題にしています」

■「冥土の土産」構想発「Maid in Tokyo」

冥土の土産-近年は秋葉原土産にも注力されていらっしゃいますが、秋葉原土産を発売するに至ったきっかけは何だったんですか?

大久保「やっぱりメード喫茶の登場が大きかったですね。メード喫茶が秋葉原に登場し始めたころ、さまざまなメディアで話題になり我々も『秋葉原が観光地になる』という感覚に至ったためです。もう1つの理由はメード喫茶だけに『冥土の土産』をリリースすることが決まり、最初は巣鴨で販売しようと思っていたんですが、街にいらっしゃる方たちからすると『嫌がらせか!?』ということになってしまうので巣鴨での販売をあきらめて、秋葉原で売ることにしたんです。しかし、そのままの『冥土の土産』ではやはりインパクトが弱いということになり、『Maid in Tokyo』という商品名を付けてリリースすることになりました」

-確かに巣鴨じゃきついですね(笑)。

大久保「そうですよね(笑)。巣鴨だと大勢の方からクレームが来てしまいますので、社内だけの話で収めました(苦笑)」

-『Maid in Tokyo』シリーズが秋葉原土産の第1弾でしたね。

大久保「そうです。『Maid in Tokyo』ブランドのクッキーとチーズケーキ、チョコレートクランチの3種類です。これらを発売するにあたり、クッキーはイラストレーターの『おーじ』さんに、他2種は弊社が今までパッケージをお願いしているデザイン会社さんに依頼しました」

-なぜ、パッケージイラストの依頼先にバリエーションをもたせたのですか?

大久保「ちょうど秋葉原の市場にこれから踏み出すという時で、どういう反響が返ってくるかわからなかったからです。リサーチもしていたのですが、オタクの人たちは『全然ダメ』『すごくいい!』と意見が分かれてしまい結論まで行き着かないんですよね。そのため、我々もどういった路線がいいのか不明だったということもあり、2パターンリリースしたという経緯があります」

-御社のお土産商品のパッケージは毎回インパクトが強いですね(笑)。

大久保「ありがとうございます。毎回わかりやすさに注力してるんですよ。お土産ってその場に行った証(あかし)アリバイ的なものであると同時に旬の話題とセンスも兼ね備えているべきだと思います。それに加え『土産話』という言葉があるように、話になるネタがお土産に詰め込まれているということが重要です。お土産を持って行った人は渡した人のリアクションが大きければ大きいほどうれしいと思いますので、秋葉原土産商品に関してはリアクションの幅に重点を置いて開発しています。一般向けのパッケージにしてしまうと、土産話のネタになりませんからね」

-御社の秋葉原土産商品の中で一番売れたのはどれですか?

大久保「『秋葉原』ブランドで出した商品の中では、『Maid in Tokyo』メイドクッキーがダントツです。あれは2年前くらいから販売してるんですが右肩上がりで伸びています。土産商品については消費者の飽きが早いんですが、あのクッキーは落ち込むことなく日に日に売り上げが伸びています」

■遊び心を商品に反映

大久保さん-全国のお土産を展開されている御社ですが、他の地域と秋葉原を比べて異なっている点はありますか?

大久保「集客力が全然ちがいますね。秋葉原は非常識を受け入れてもらえる街であり、来街者のみなさんも非日常を味わうべく秋葉原に来ているんだろうなというのが我々の認識です。秋葉原土産商品のノウハウを他の地域に生かせるか試してみたことがありますが、やはり市場が違うので売れ行きも思うように結び付きませんでした。秋葉原だからこそウケるんでしょうね」

-最近は「秋葉原のお土産商品=大藤」といった感じで、ブランドが確立されてきているかと思いますが、成功の秘訣はどんなところにあると思いますか?

大久保「成功してるかどうか自覚はしてないのですが(笑)、あえて言うならばどの商品も『楽しんで作る』ことが非常に大きい要素だと思います。例えばオヤジギャグなどの遊び心が詰められていたり…。アイデアが出るのも社外にいるときの方が多いですね。居酒屋などの飲みの席や会社の帰り道などリラックスしつつもハイテンションな状態で『そんなの絶対作れるわけないよ(笑)』とかいうノリで始まった商品の方が比較的いいものが出来上がり、お客様のウケもいいです。それほどインパクトや個性の強い商品を消費者が求めているんでしょうね」

■段ボール肉まん店-全力で止めたんですけど(苦笑)

毬琳-ところで、御社の社長が関連会社を作り秋葉原に出店された段ボール肉まん店「毬琳(マリリン)」も反響を呼んでいますね。

大久保「実は出店の際、社員一同『不謹慎だ』と全力で反対したんですが、社長が言うことを聞いてくれず、どうしても作るのであれば別会社で…ということで作ってしまいました(苦笑)。全力で止めたんですけどね」

-「毬琳」は、御社の商品と同様ブラックユーモアを含ませつつ、商品へのこだわりは人一倍だと聞きましたが…。

大久保「人が不幸になるような商品は作らないという基本姿勢は変わらないのですが、段ボール肉まんは実際にあったのかなかったのか誰も知らない、都市伝説的なもので、誰かが被害を被ったという報告はなかったため出店したというわけです。なおかつ実際、段ボール肉まんを作るにあたって中国人の方からどれくらいの反響があるのかわからなかったため、中華街に出向きリサーチしたところ、思ったほど大きな批判がなかったためです。ただ、あれだけブラックユーモアを盛り込んでしまっているわけですから、品質には厳しい審査を行いました」

-ネットでも反響が大きかったですね。

大久保「我々も2ちゃんねるなどネットの意見は参考にしています。『おでんカレー』発売の際、やはり2ちゃんねるで多くの批判を受けましたが、そのとき逆に『この商品はヒットする』という自信が生まれました(苦笑)。皆さんやっぱり、ブログで書くネタを探しているんですよね。そういったところで、おでんカレーも段ボール肉まんもネタとしてささりやすかったのかもしれませんね」

■非日常が混在する街-秋葉原

大久保さん-それでは、そんな御社のこれからの展開や目標をお聞かせください。

大久保「流れに身を任せます(笑)。もちろん、時期ごとに旬の話題が出てきますし、このような秋葉原土産や政治モノなどの企画商品は定番品としてそれほど根付くものではないのでリリース時期とストップ時期を見極めながら新しい商品を投入していくことがこれからの展開です。このほか、『毬琳』が5月明けころにクローズしますので、その後何をやるかにも期待していただければなと思います。逆に、皆さんからアンケートをとって『こういった店が欲しい』といものがあれば、我々、作りますので…(笑)」

-確かに、『毬琳』の次の展開は気になりますね(笑)。

大久保「ありがとうございます。最近ネタがなくなってきてしまっているので皆さんからネタを頂きながらやっていきたいですね。いかんせん企画商品故、ネタが尽きてしまうと弊社的に厳しいので、『こういったものを作って!』というアイデアは常に募集しています」

-では最後に、御社にとって秋葉原とは?

大久保「テーマパークであり、日常と非日常が混在する街。それが魅力だと思います。その魅力を求めて街にいらしている方も多いと思いますので、我々も店舗の展開や商品の充実を 図りその魅力をよりいっそう引き立てるお手伝いをしつつも、皆さんに驚きを提供していけたらと思っています」

-ありがとうございました。

【あとがき】

下町情緒ただよう日暮里に歴史ある佇まいの本社を構え、今も昔も変わらずユーモアと遊び心を持ち合わせた土産商品を展開している同社。大久保さんの話から、彼らがリリースする商品が常に独自のインパクトを放っている理由を少しだけ垣間見ることができたような気がした。アキバ経済新聞では「皆さんに驚きを提供していきたい」という大藤の活躍に、今後も注目していきたい。

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