コミックマーケット84で話題を呼んだグルメ本「町あるき江東」の市販が8月30日、D-STAGE(千代田区外神田3)で始まった。
江東健康友の会が発行する新聞「けんこう」で、「メタボ防止のための町歩き」をテーマに2008年4月から始まった連載のうち4月20日までの60回分をまとめて冊子化した同書。筆者は74歳の男性で、本の中の挿絵や地図、文章、編集を全て一人で担った。
内容は江東区内のさまざまな飲食店を巡り、「しがらみの無い戦前生まれ戦中育ちの1江東区民のグルメ本」として1店に付き1ページの筆者による評論を掲載するほか、区内の名所旧跡や公共施設も訪れ、率直な感想や筆者のうんちくを行ったその日のうちに書き上げライブ感を演出。「孤独のグルメ」「ブラタモリ」「ちい散歩」「ゆうゆう散歩」のようなテレビの町歩きリポートの雰囲気も併せ持つ。若いころから描いていたスクリーントーンを使ったカットイラストや手描きの地図なども取り入れ、ホッとした親しみのある紙面に仕上げた。
同書がコミックマーケット84での頒布に至る経緯については、筆者の息子・矢野芳典さん率いる同人サークル「NECO青龍」が筆者からコミックマーケットでの頒布を依頼されたことに始まる。矢野さんは、300部発行されたうちの残る在庫を確保。8月8日にツイッターで「『うちの親父(おやじ)が70歳超えて同人デビューした』 江東区のいろんな店に孤独のグルメよろしく入って1ページ1店舗の飲食店レビューをした本。72ページ300円 2日目東フ-07a NECO青龍」とツイートしたところ、コミックマーケット84開催までに8800リツイートを獲得。当日は開場後15分で完売した。
当初、筆者は再版の意図がなかったというが、矢野さんのツイッター上での署名活動による再版希望の声を受け、今回の市販が決まった。
同店専売での市販については2005年、矢野芳典さんが同人の世界で困ったことがあった際に多くの店やスタッフが助けてくれたが、現在ではそれらの多くが閉店・同人事業から撤退しているほか、スタッフについては別の業界へと職種を変えていた。その中で、当時別の同人書店に勤め、現在D-STAGEに移籍したバイヤーが唯一、同人書店の現役担当として在籍し、同書がツイッターで話題になった際に同書について興味を持っていたためだという。
仕様はB5変形、74ページ。価格は450円