このたび、石田月美 頭木弘樹 鈴木大介 樋口直美 著『専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ――安全な対話のための実践ガイド』(晶文社刊)が、「第3回 生きる本大賞」の大賞を受賞しました。

帯付き書影
株式会社未来屋書店が、多様な社会に対し「生きる」ことに寄り添い助けるような書籍普及を目的として2023年に創設した小さな文学賞。約1年間に発売された“「生きる」に寄り添う” 広義のノンフィクション・エッセイの書籍から、有志書店員が各書店で1作品を候補作として選出し、選考会を経て「一番良かった、伝えたい本」を大賞として選出します。大賞発表後、一部店舗にてフェアを開催。
【選考委員】
酒井七海(もくめ書店)、高橋豪太(青山ブックセンター本店)、笠原レナ(本屋イトマイ)、古賀詩穂子(TOUTEN『BOOKSTORE)、服部健太郎(ほんの入り口)、入江真紀、高橋祐介(未来屋書店)
【フェア実施店舗】
未来屋書店 全国194店舗(フェア開催店舗:96店舗、大賞のみ展開店舗:98店舗)
青山ブックセンター本店(東京都渋谷区)
TOUTEN BOOKSTORE(愛知県名古屋市)
ほんの入り口(奈良県奈良市)
本屋イトマイ(東京都板橋区)
もくめ書店(山梨県南都留郡道志村)
「第3回 生きる本大賞」 詳細はこちら
■巷で話題の、だからこそ「胡散臭い」とも思われているオープンダイアローグについて4人の当事者が専門家なしで体験してみた対話の記録。この本自体が見事なポリフォニーを体現していて、「ならば私は、どんな声を発してみる?」と世界に向かって小声でつぶやきたくなる。対話を信じる入り口に。
■「危険な会話」は日常のなかに溢れていることにはっとした。本書は「安全な対話」のための実践の記録であると同時に、生きるための道具としての本であった。安心できる場を作ろうとしているからこそ読者にもひらいた本となり、笑って泣いて、心をオープンにして読むことができる。
■ハーモニーは気持ちいい。だから厄介だ。困りごとを持ち寄り、ルールに則り会話する。そこには同情も遠慮も、解決もいらない。それでもこの会話は安全なのだと、本書の実践が示している。これはすべての対話の場で根底に持っておくべき考え方だ。ポリフォニックであることが、もっとも自然な世界の在り方であり、生き方であるのだから。
石田月美さん
「対話ってなんだろう」
わずかでも興味が湧いたらページをめくってみてほしい。
複数人で話す。けれど解決は目指さない。にもかかわらず変化が起きる。
この不思議な営みの内実が本書には詰まっている。
オープンダイアローグとは、三人以上で、議論・説得・アドバイスなしに、互いを否定せず話しを続けることだ。たったそれだけ。それだけで、一人ひとりが鮮やかに変わっていく。
お喋りが苦手でも大丈夫。私自身、空気が読めない、雑談ができない、そもそも人と何を話したらよいのかわからない。さらに、相談が苦手、迷惑をかけるのが怖い、でも困っている。そんな状況からやってみた。だから、私のような人も、もちろん人と話すのが得意な人も、本書をめくりながらオープンダイアローグをやってみてほしい。そして、どうだったかを教えてほしい。
私はいまでも困っている。多くの精神疾患を抱え、日常生活もままならないことばかり。それでも。生きていくのが怖くてしかたなかった私が、対話を続けていくうちに、誰かを信じ、この世界を信じ、今日一日を送れるようになった。
だから一緒にやってみよう! まだ見ぬあなたと対話できる日を、私は楽しみに待っています。
頭木弘樹さん
私の人生の目標は「生きること」なので、「生きる本大賞」をいただけて、とても嬉しいです!
生きるためには、コミュニケーションが欠かせません。しかし、コミュニケーションが苦手な人もいますし、人と話をすることで、傷つけられたり、傷つけてしまうことも少なくありません。
私がオープンダイアローグをやってみて、いちばん強く感じたのは、「日常会話って、じつはすごく危険だったんだなあ!」ということです。
オープンダイアローグで、ルールを決めてしゃべるということに、最初はとても違和感を覚えたのですが、やってみると、むしろ「日常会話って、無法地帯だったんだなあ!」と気がついたのです。
それじゃあ、もめ事が起きるはずです。しかも、日常会話には、じつはたくさんの暗黙のルールがあります。雑談が苦手という人がいるのも当然です。
安全で自由な対話のための方法として、ぜひオープンダイアローグを日常に取り入れてみてください。
プロではなくても、ルールさえ知っていれば草サッカーや草野球を楽しめるように、誰でも安全に使えます。家族どうしの相談にもぜひ。
鈴木大介さん
僕たちの本に、素晴らしい評価をいただき、とてもありがたく思います。本書に携わった四人は全員障害や病気を抱え、全員物書きであるという共通点もあることから「そもそも深い対話の成立するゴールデンメンバーを揃えて挑んだのでは?」と思われるかもしれません。けれどそれは、全く違います。
僕たち四人は、どのメンバーとどのメンバーであっても1対1の雑談になったら対話が途切れてしまうかもしれないし、世代も生きてきた世界もあまりに違うし、全員多分あんまり話し上手じゃありません。
けれどそんな四人が集まって互いに開示したのは、これまで誰にも相談したことのなかったこと、相談しても仕方がないと思っていたような、こんがらがった人生のテーマでした。
オープンダイアローグが、対話に安全性を確保した上で「継続させるための仕組み」だからこそのことだったと思います(当初、うさんくさいな〜などと思っていた自分を大いに恥じています)。
本来対話が続かない、むしろ対話が危険に思える相手とも、対話継続が可能になる。「治療」のシーンだけではもったいないこの仕組みを、是非本書を通じてより多くの方々に知っていただけたら素敵です!
樋口直美さん
良質な本に授与されるこの賞を頂き、本当にうれしいです。ありがとうございます。
今回、私は半世紀以上も誰にも言わなかったことを3回のセッションで対話し、第3章でその内容を文字起こししています。相談者の私がセッション中に感じたこと、次のセッションまでの間にしたこと、全過程を通して発見したことなども記しています。
人の内面の変化は外からは分かりにくいものですが、この章で相談者の変わりゆく内面、変化を起こすオープンダイアローグの不思議を一緒に体験してください。
私が語ったことは、知的障害のある兄を持つ「きょうだい」の私に幼い頃からヤングケアラーの役割を負わせた母に対する捻れた思いでした。少々特殊な立場です。ただ家族間で何の痛みを負うこともなく育つ人などいるでしょうか。誰もが大なり小なりの痛みを抱えて大人になり、「もう昔のこと」と蓋をしているのではないでしょうか。その蓋は、何十年も経って親を介護することになった時、親と別れる時に突然開いて多くの人を苦しめているように感じます。
安全な対話を可能にするオープンダイアローグは、古傷に蓋をしてきた私の記憶を開き、新しい場所に導いてくれました。皆さんにも心の痛みを手放せる日が訪れることを心から願っています。
ただ繰り返し対話する、それだけで高い効果をもたらすとして精神医療やメンタルケアの世界で注目される〈オープンダイアローグ〉。この手法、病気や困りごとを抱えた当事者だけで安全に行えることをご存じですか?
本書は、全員素人かつ病気/障害持ちの物書き4人がオンラインで行った対話をもとに作成した、悩める者の悩める者による悩める者のためのガイドブック。
これまで話せなかったことを話せる場の力、問題を解決しなくても救いが訪れる驚き──こころのケアの新しい可能性をひらくオープンダイアローグの世界へようこそ。
実施にあたり精神科医・斎藤環氏と交わしたQ&A、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパンによるガイドライン(抜粋)も収録。
「試し読み」はこちら
はじめに やってみる!?
斎藤環さんに聞いてみた オープンダイアローグQ&A
第1章 紹介
「胡散臭く」なかったオープンダイアローグ(鈴木大介)
第2章 実践 オープンダイアローグ1 日々の困りごと
「嫌なことがあると、ずっとそのことを考えてしまう」(石田月美)
第3章 実践 オープンダイアローグ2 人生の困りごと
「兄のケアを負わせた母への捻れた思い」(樋口直美)
第4章 総論 オープンダイアローグを終えて
危険な会話から安全な対話へ(頭木弘樹)
おわりに
一致しなくてもわかり合える
付録 『オープンダイアローグ対話実践のガイドライン 第1版』(オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン/ODNJP)抜粋
書名 『専門家なしでやってみよう! オープンダイアローグ――安全な対話のための実践ガイド』
著者名 石田月美 頭木弘樹 鈴木大介 樋口直美 著
定価 1,980円(本体1,800円)
判型 四六判並製
頁数 284頁
ISBN 978-4-7949-8027-4
発売日 2025年12月発売
発行 株式会社晶文社
書籍サイト
https://www.shobunsha.co.jp/?p=9171